ウルヘル辺境伯領は周囲を険しい山々に囲まれた土地である。


 70年程前は一つの小国として成り立っていただけあって、周囲の山が要塞のような役割を果たしていて、長い間他国の侵入を許していなかったという。


 眼下に捉えたウルヘル辺境伯の領地は、所々で煙が上がっていた。野焼き等ではないような煙の上がり方である。


「偵察によりますと、ウルヘル辺境伯軍はほぼ総崩れ。3000から大きく数を減らし、1000前後になって現在籠城戦になっている模様です。反乱軍の首謀者及び全体の九割……約5000がウルヘル辺境伯の城を取り囲むようにして布陣。残りの一割は制圧した各地に散らばっている模様です。深夜から朝方に掛けてはあまり激しくはない様ですが、……城が落ちるのも時間の問題かと」

「そうか……」