わたくしは生まれた時からなんでも与えられた、お姫様だった。


 ホノリスという大国の王女に生まれ、誰からもかしずかれる立場にいた。わたくしは周りの国との関係や国内の情勢を考えて、ホノリスの大貴族に嫁いでそのまま大事にされる未来を約束されていたも同然だった。


 だが突然、わたくし達の国で流行病が猛威を振るい、多くのホノリスの人々が亡くなってしまった。貴族もそこに含まれていたし、流行病が去った後、被害にあった村や街には大事な働き手が少なくなってしまった。


 働き手がいないと国の経済も政治も回らない。薬も物資も全く足りない中、更に弱った所に流浪の民の侵略。ホノリスは短い間に随分と落ちぶれてしまったのである。


 ホノリスの国王であるわたくしのお父様は、何とかして国と国民を守ろうと考え出した結果、近くの国に助けを求める事にしたのだった。


 ほんの僅かに国土を削る事になってしまったが、概(おおむ)ね他の国はそれなりに力を貸してくれた。流浪の民を撃退する軍を派遣してくれはしなかったけれど。


 そんな中、隣国だったアルガイオの使者が魅力的な話をお父様に持ってきたのだ。