けれど……、けれど、傷心中のクリストフォロス様にそんな事を言っていたのか、この人は。


「貴女が亡くなって3ヶ月後位から出た話なのだけれど、最初は跳ね除けていたわ。今はそんな気分になれない、とね。貴女の居なくなった部屋にふらりと1人で足を運んで、よく物思いに浸っていらっしゃったわ」


 私は思わず胸を押さえた。
 どうしようもなく、痛い。遺してきてしまった、彼がどんな思いで私が使っていた部屋にいたのだろうか。


「明確にクリストフォロス様がおかしくなったと皆が気付いたのは、子供が生まれてからだったわ。クリストフォロス様は、子供を生んだ母親を労ってくれたわ。でもわたくしじゃなかった。わたくしを通して、自分の子供を産んだ貴女の幻影を見ていたの」

「え……?」

「その頃は激務だったから、皆クリストフォロス様がやつれているのもそこまで深く気に留めなかったし、クリストフォロス様はお疲れだから仕事を減す方向に進めていただけだったわ。でも原因は仕事ではなかったのよ」


 側室に亡くなった王妃の幻影を重ねる国王。
 そんなの、おかしすぎる。


「壊れてしまっていたのよ。クリストフォロス様は。もうこの世にいないエレオノラ様の姿を求めて、側室に王妃の姿を求める位には。その時、わたくしの中の醜い恋がようやく終わりを迎えたの」