「だから、わたくし、あの人の隣に立ちたいと思ったの……!胸を張って、ずっとあの人に見てもらえるように」


 やっぱり、やっぱり私達の恋は誰も幸せにはしなかった。
 彼女は私達の恋の犠牲になったのだ。


「でも、クリストフォロス様はずっと貴女を見ていたわ。わたくし、最初は2番目でもいいから彼の視界に入りたかっただけなのに……、あの人はわたくしの事なんてどうでもよかったの。貴女が死んでから、痛感したわ……」


 ファウスト様は話してくれない。
 私が死んだ後、クリストフォロス様がどんな生涯を歩んだのか。


「みんな気付かなかったの。
 わたくしとクリストフォロス様の縁談を纏めたペルディッカス様は、クリストフォロス様は今は傷心の身であるが、きっとわたくしを王妃にして下さるだろうと聞いたし、他にもクリストフォロス様をお慰めする為の側室が増えるだろうと仰っていたわ。事実、クリストフォロス様にそんな話がいっていたみたい。わたくしもクリストフォロス様に直接お願いしていたの」


 クリストフォロス様より若かった私が、あっさり逝ってしまったのだ。貴族達の驚きは大きかっただろう。
 アルガイオの王族の血を絶やさぬように躍起(やっき)になるのも頷ける。