「どうやったら王妃の立場から追い出せるか、どうやったらクリストフォロス様の隣から貴女を消せるか、どうやったら貴女はいなくなるかばかりわたくし考えてたわ……!
だってそうでしょう?わたくしは流行病のせいで国力が弱ったとはいえ、一国の王女だったのよ……?!あんな……あんな……側室なんて……、蔑ろにされるなんてあってはならないとは思わない……?!」

「……そ、それは……」


 ビアンカの迫力に私は思わずたじろぐ。
 私もビアンカが側室になるだなんて、思わなかった。


「……でも、……でも、そんなの建前に過ぎなかったの。わたくしが貴女を邪魔だと思える、大義名分に過ぎなかったのだわ」


 ポロリとビアンカの栗色の瞳から涙がこぼれ落ちる。それが昔見た紅色の猫目と、重なった気がした。


「わたくしの祖国を援助して助けて下さった夫を、わたくしを気遣ってくれる侍女達を付けてくださった夫を、好きにならない筈がないでしょう?」


 クリストフォロス様がテレンティア様の事をどう思っていたのか、今となってはもう分からない。


 それでも、クリストフォロス様が隣国の王女であったテレンティア様に対して気遣いをみせたのは、1人でアルガイオに嫁いでくるテレンティア様への最大限の配慮だったのだろうと思う。


 クリストフォロス様がテレンティア様の事をどう思っていたとしても、クリストフォロス様が私を想ってくれていたのは疑いようがない位、私は愛されていた。