実は将軍と兵を率いる隊長達とも先程議論を交わしたばかりなのだが、隊長達から聞く兵の様子と本当の兵の様子が違う事がないようにとラウルに探ってきてもらうよう頼んでいた。ラウルの報告と隊長達の報告は一致していたので問題はないだろう。


「やっぱり5日かかったかー!長かったなー」

「こら、シスト。はしたない真似は辞めなさい」

「ラウルのけちー」


 椅子に座りながら、ぶらぶらと足をばたつかせるシストにラウルが小言を言う。シストはずっと進軍の間、別行動をしてもらっていた。


「ウルヘル辺境伯領の状態ですが……、ウルヘル辺境伯家が現在反乱軍を食い止めているようです。ウルヘル辺境伯家の婦女子は既に領地を脱出済み。国王陛下が受け入れるとの事ですので、王都へ向かっているようです。今は……この辺りかと」

「ラウル、ありがとう。ウルヘル辺境伯の婦女子が人質になるような事がなくてよかったよ」


 ラウルが地図で指し示した辺りは、もう王都に近い場所だった。ウルヘル辺境伯が討ち死にした直後に脱出したのだろう。少し行動が遅かった気もする。


「ウルヘル辺境伯領は元々70年ちょっと前は他の国だったからねー。いざという時どう動くかっていうシナリオは一応あったんだろーけどね」

「まあ、70年も何もなかったら、警戒を怠おこたるのは仕方ないかな?」

「それもそうかー」