荷物を置いた侍女達は、ビアンカと私を置いてさっさと退出した。


「……ビアンカ。貴女はこの状況を分かっているの?」

「はい」

「ビアンカは自由に外に出られるの?」

「いえ……、この屋敷の中だけなら自由に動けるだけです」


 淡々と私の質問に答えながら、ビアンカは運んできた荷物を開いていく。
 その様子をじっと見ていた私だったけれど、出てきたものを見て目を見開いた。


「……こ、これ……、花嫁衣装じゃない……!」

「ええ。レオーネ男爵家がクラリーチェ様が恥をかかないようにと、立派な花嫁衣装を選んだそうです」

「ここに運んでくるの……?」

「何をおっしゃっているのですか?クラリーチェ様、式はもうすぐなのですよ。サイズ合わせもしなければなりません」

「え……」


 純白の花嫁衣装。精緻(せいち)な紋様が施されたレースが幾重にも重なっていて、一目見て高価なものだと分かる。自分自身に用意されたものは前世を含めてこれで2着目だ。


 セウェルス伯爵との結婚式に出る訳にはいかない。