「兄上も父上に掛け合ったらしいが、上手くいかなかったようでな……。だから私と兄上で計画を立てることにした」

「計画……?」

「ああ。兄上を殺す計画だ」

「殺すって……?!」


 度肝を抜かれた俺に、本当に殺す訳がないだろうとアルフィオ殿下はニヤリと笑う。


「兄上は王族から抜けたい。私は国王になりたい。意見が一致したという訳だ。勿論兄上には王族から抜けた後、私の統治の手伝いの代わりに今後の生活を保障する事を約束している」

「そう……なのか?」


 アルフィオ殿下の説明にファウスト殿下を見ると、彼は穏やかに微笑んで頷いた。

「ああ。もう王族は懲(こ)り懲(ご)りだよ」

「だからといって、何としてでも兄上を国王にしようとしている第一王子派のアウレリウス公爵が納得する訳がない。そして、私が王位に付いたら権利を振るうであろう母上の実家の第二王子派クラウディウス公爵家も邪魔だ」

「だから、纏めて力を削いじゃおうっていう計画だよ」


 軽い感じで言っているが、かなり難しい計画だ。
 上手いこといけばすごい事である。貴族の力は時には国王ですら左右される事があるくらいなのだから、対立する二大勢力を一気に削ぐというのは中々成し遂げられる事ではない。


「だからね、アルフィオには怪我をしてもらう予定だよ」

「怪我……?!」

「本当に怪我をする訳じゃないぞ。サヴェリオ。宮廷医を抱き込んで、怪我のフリを私がするんだ」


 異母兄弟とはいえ、面差しの似ている二人の王子を見比べながら、俺は一抹の不安を感じた。