貴族の庶子でも存在を認知されない場合もある。それに比べれば、離れとはいえ立派な家に住み、美味しいご飯を食べ、貴族の子女らしく教育を受けて生活を送れているのだから、これ以上望む事がないくらい幸せな待遇だ。

 それもこれも、王都で女優をやっていたお母様の美しい美貌をそのまま受け継いだ私が、いずれ自身の政略の為になると思ったお父様が駒として手元に置こうと思ったからだろう。

 現に婚約者として引き合わされた二十近くも年上の伯爵様が私を是非後添いにと言ってきて、結婚に乗り気になった程である。

 今はまだ成人していないので婚約者となっているが、男爵の愛人の子供が伯爵様に嫁ぐことになるのは大変な出世ではなかろうか。

 結婚まで、あと1年という所で他の男に通われてるだなんて噂になったら、間違いなくこの婚約はご破談だ。しかも相手は王太子殿下。

 責任を取れだなんて迫らないし、どう考えても私だけが泣き寝入りするしかない。側室に上がれるのであれば大出世だが、上がれる保証もない。

 周りが許さないだろう。醜聞が出た時点で、王太子を支持している者達に私が消される可能性がある。

 何故なら、王太子殿下であるファウスト様が非常に不安定な立場にいるからだ。