「娘ももうすぐファウスト殿下の元へ嫁入りだ。私も年をとるものだと感じるよ。どうだね?サヴェリオ殿は気に入った令嬢や婚約者はいるのかい?」

「いえ……特には……」


 ここ最近パーティーの度に掛けられる誘い。
 侯爵家の跡取りという位置がかなり関心を持たれているらしく、ひっきりなしにこの手の誘いや縁談が来る。


 まあ、前世もイオアンナと結婚する前は特定の人を作らずにフラフラとしていたので、同じような誘いは何度もされてきた。いつもの事だなとすんなり流せるくらいには。


 それでもこのタイミングで声を掛けられるのはやめて欲しかった。


 アウレリウス公爵とは取り留めのない話で終わった。

 しかし、貴族の会話は今世(いま)も前世(むかし)もちっとも気が抜けない。話しながら途中途中で周囲の様子をさりげなく探る事は出来るが、ずっとは不可能だ。気を抜くと、言質を取られて何を噂されるかもわからない。


 そんなこんなで、セウェルス伯爵の動向をさり気なく探ってはいたが、途中で1人外に出たきり帰ってこなかった。


 夜会を抜けたか……と悔しい思いをしながら、アウレリウス公爵といつの間にか加わっていたアウレリウス公爵と同じ第一王子派の貴族と、また別の貴族の子息に囲まれて抜け出せなかった。