ああ。〝上手くいった。〟

 子供は可愛らしい。
 ずっと探していたのだから。ずっと欲しかったのだから。
 エレオノラの負担になっていた世継ぎが出来てくれたのも嬉しい。


 すやすやと眠りについた子供を抱きながら、不意に思い出す。
 そういえば、母親に労いの言葉を掛けていなかった。


「ご苦労様だったね」


 そうだ。僕はなんで今まで忘れていたんだろうか。真っ先に労わなければいけない筈だったのに。


 ほら、エレオノラにも伝えなければ。君の重荷はなくなった、と。きっと複雑な顔をするに違いない。


 でも、本当のことを教えたら、きっと僕が道から外れてしまった事を知ってしまう。彼女が罪悪感を感じてしまう。
 でも、どう言えばいいかなんて、分からなかった。


「ゆっくり休んでね」


 赤子を近くの侍女に渡し、僕は母親に微笑みかけて執務室へ戻る廊下を歩く。


 ーーあれ、何か、おかしい。
 エレオノラは死んでしまった筈だったのに、もういない筈だったのに。