それでも、隣国の王女の元へ行くときの罪悪感。エレオノラの元に帰るときの、後悔が拭えない。


 後ろめたい事だらけだった。
 エレオノラが自分を責めないように、エレオノラに世継ぎの重圧が掛からないようにするので精一杯だった。


 エレオノラがそんなことする筈がないのに、彼女の桃色の瞳がじわじわと僕を苛(さいな)んでくる。エレオノラは僕を責めるような事は、絶対にしないのに。


 むしろ責められた方が楽だったかもしれない。詰られた方が救われたかもしれない。僕だけを見てと、彼女に愛を乞うたのに、僕は彼女以外も妻にした。


 国王として、夫として、一体何が正しいのかもう全く分からなくなっていた。


「……相応の立場には相応の責任が伴うものだからね」

「ファウスト殿下は、それが果たせなかったの?」

「……うん」


 甘い事を言っているのは分かっている。
 僕はただ、彼女と幸せになりたかっただけだ。それが誰にも祝福されなかったとしても。