シストは頬杖をついたまま、その碧眼を少し伏せる。青空のような色が、陰った。


「でも、全然違うんだね。ファウスト殿下も僕の嫌いなアルフィオ殿下だって、キラキラとは程遠い所にいるんだなって身近に見て感じたよ。僕さぁ、おとぎ話の王子様とファウスト殿下達を同一視しちゃってた」


 僕はシストの話を黙って聞いていた。僕はずっと前世を含めて王子様だったから、シストみたいに王子様以外の何かになった事がなかったから。


「王子様達も、僕達と同じように沢山悩んで、沢山悲しんで、沢山頑張って、そうしてやっと何かを成し遂げる人間なんだって。周りの人にキラキラしてるように見せてるだけだなーって」

「……うん」

「そう考えるとさ、王子様達ってこうでなければならないっていう決まり事とか、印象とか、沢山のことに縛られて不自由だなって僕は見てて思うよ」


 とても、とてもその通りだった。


 ただの1人のクリストフォロスで、ただの1人のファウストであればどんなによかっただろうか。


 好きな人の手だけ取って、嬉しい時も、辛い時も全部彼女の側にいて、彼女と一緒に一生を終えられたらよかったのに。


 昔の僕は立場上、どうしても他の女を妻にしなければならなかった。心のどこかでは分かっていたんだ。エレオノラ以外の妻を娶らなければ、王家の血が途絶えるって。


 でも、僕はどうしても出来なかった。エレオノラを日陰の身にしたくなかった。ずっとずっと笑顔で僕の側にいて欲しかった。


 そう、だから本当に僕は国王としての道を踏み外したんだ。