「シスト。そんな所にいないで室内に入っておいで」

「えー、だって温かいんだもん。ちょっとくらいいーじゃん!」


 器用に窓に腰掛けるシストは、暖かい日差しに目を細めていたが、僕の声に不機嫌そうに頬を膨らませた。


 でも流石に僕の執務室は王城の中でも高い位置にあるので、見ているこちらが冷や冷やしてしまう。


「危ないよ」

「ファウスト殿下のけちー」


 口を尖らせながら文句を言うシストだったが、言われた通りに室内に戻ってきた。


「そう言えばクラリーチェ嬢だっけ?見つかったみたいだね。ラウルが頑張ってたから当たり前か」

「そうだね」

「本当はファウスト殿下は迎えに行きたいんでしょう?いいよ。僕がファウスト殿下になりきるから」


 僕が執務室のソファーに座っているのをいい事に、空いた執務机の椅子に座って、シストは机に頬杖をつく。


 僕は苦笑して、やる事があるから無理だよと答えた。
 ちゃんと見張りは付けている。危ない目にあったら、それとなく守るようにとも。


「僕さ、ファウスト殿下のフリをしてて思ったけど、昔は王子様ってキラキラしている印象しかなかったんだ。
だって、おとぎ話とかで出てくる王子様はいつもキラキラしていて、必ずお姫様を助けに行けるんでしょ?すっごいかっこいいじゃん!僕憧れてたから、ちょっとファウスト殿下の影武者になるって話、とっても楽しそうって事しか思ってなかった」