外の状況がここでは分からない。
 それに、私はこのまま結婚する訳にはいかない。私の為に足掻いてくれていた人に何も言えていない。


 私の決意の篭った言葉に、ビアンカは淡々とした調子で答えた。


「レオーネ男爵家に帰った所で、貴女はどうなさるのですか?誰も待っていないというのに」

「……え?」

「レオーネ男爵はクラリーチェ様とセウェルス伯爵が結婚する事を望んでいるのですよ。何故帰る必要があるのですか?」


 いつものようにビアンカの栗色の瞳がジッと私を射抜く。


 いつもと違うのは、その瞳が優越感に浸っていた事くらいだったーー。