「なるほど……。分かった。最優先で調べてクラリーチェを保護してくれ。早くだよ早くして」

「はっ」


 ラウルは頷くなり、再び隠し通路の中へと消えていく。
 第一王子である僕が表立って動く事は出来ない。それがとても歯がゆい。


 前世も今世も、僕は立場に縛られてばっかりだ。
 クラリーチェ、お願いだからどうか無事でいて。


「ただいまー!あれ、ファウスト殿下だけ?」

「そうだよ」


 身代わりをしていてくれたシストは、部屋に帰ってくるなり首を傾げる。それに応じながら、僕は内心とは裏腹にゆっくりと立ち上がった。


「あ、ファウスト殿下!今日の議会で北部に反乱の兆しがあるって議題が上がったよ」

「北部で反乱?それはまた穏やかじゃないね」


 反乱とは珍しい。
 しかし、大規模な反乱が起こった場合、間違いなく中央から兵を送る事になるだろう。率いるのは将軍……規模が大きすぎる場合は、王族の誰かが行く可能性が高い。