「ないですけど」

「……ないのか?」

「え、ファウスト殿下はクリストフォロス陛下で、ずっとエレオノラ様一筋じゃないですか。主の旦那様という事で敬愛はしておりますが、そんな婚約者だなんて仮でしかない……というか、恐れ多過ぎて……」

「……は?」


 キョトンとしたフォティオス様はどうやら私の言葉が理解出来なかったようなので、私は握り拳を作り、勢い込んで想いを語った。


「クリストフォロス陛下とエレオノラ様が一緒にいる所を見ると、お互いがお互いを必要としているというか、もうそこに二人だけの世界が完全されていて、私達侍女は完全にその二人だけの世界の傍観者というか、理想的な夫婦の在り方をそのまま体現されているお二人を眺めるのが私達の至福だったんです!!それにお二人共お顔立ちがとても美しいので、見てるだけで本当に幸せだったんですよ!!クリストフォロス陛下は本当にエレオノラ様の事を大事にされていましたし、こう……傍から彼らの幸せを見るだけでこっちまで幸せになれむぐっ」

「分かった!分かったから!もういいから!」