フォティオス様はまだ疑いの目で私を見た。


「……本当か?ファウスト様に想われているクラリーチェ嬢に嫉妬したなどという事はあるまいな?」

「なんで私がお二人の仲に嫉妬するんですか?」

「……それは」


 私が首を傾げると、フォティオス様は眉を寄せて黙り込む。苛立ったように人差し指をトントンと動かすが、一向に言葉が出てこないようでしばらく視線を右往左往させていた。


「……それは!お前が今のファウスト様の婚約者だからだ」

「……え、そうですけど、それがどうしました?」

「だから!婚約者が他の女にうつつを抜かすのが面白くないとかそういう感情はないのか?!」


 半ば自棄(ヤケ)になったらしいフォティオス様は、きちんと整えられていたはずの前髪をくしゃりと握って言った。