前世でも現在でも、貴族の女性はほとんど勉強しない。勿論、領地運営等や外交についても含まれる。


 多分彼らは私の事を無知だと思っているのだろう。実際にその事について学習したことはない。


 彼らの話す世間話程度の世情が、私と外界を結ぶ唯一のものだった。そして、そこで知ったのだ。
 ファウスト様は、とても不安定な立場にいると。第二王子が国王の位につきたいのだと。


「ああ、そういえばクラリーチェはもうすぐ成人だったね?レオーネ卿」

「はい。もうすぐで成人を迎えます」

「愛人の子供だと言っていたが……、成人してすぐに結婚して家に入るのも可哀想だろう。どうだろうか。私のパートナーとして、1年間ほど社交界に出てみるのは?」

「それは……」


 チラリと私の方を向いたお父様は、すごく複雑そうな表情をする。古くからある由緒正しい伯爵家と縁続きになって、家の箔を付けたいお父様にとっては、私が成人と同時に結婚させるつもりだったのだろう。


 だけれど、男爵であるお父様が伯爵であるエヴァンジェリスタ様の要求を突っぱねる訳にはいかない。


「分かりました。年若い娘にも煌びやかな社交界はいい思い出となるでしょう」


 お父様は、表面上はにこやかに微笑んだ。