愛を捧ぐフール【完】

 キラキラと目を輝かせるイオアンナだけれど、当時は当時でそれなりの苦労はあったかもしれない。有名な家の嫡男……いや、もうその頃は当主だったのだろう。当主と侍女なんて、身分差が大きすぎる。


「私のことはいいのです!エレオノラ様ですよ!エレオノラ様はこのままセウェルス伯爵と結婚するのですか?」

「……それは、そうね」

「陛下……ファウスト殿下の事はいいのですか?」


 言葉に詰まった。
 ファウスト様は今も私を愛してくれている。そして、私はそれを突き放せない。


 ファウスト様の前世であったとはいえ、クリストフォロス様の記憶を持つファウスト様は容姿が違ってもクリストフォロス様そのままなのだから。


 でも、今のまま、私はこの関係を宙ぶらりんにしたまま続けていいの……?


 答えは否だ。絶対にこんな事は駄目だ。

 ファウスト様は王太子。第二王子のアルフィオ殿下が王位を狙っているのに、私との醜聞でファウスト様印象を悪くする訳にはいかない。


 だけれども、私から彼を突き放すだなんて出来ない。


 そんな私の心の葛藤を察してか、イオアンナは私の背に手を置いてそっと撫でた。