愛を捧ぐフール【完】

「クラリーチェ様。貴女は覚えていらっしゃいますか?かつてこの地にあったアルガイオという今は消し去られた王国を。そして、その国で生きたイオアンナという侍女の存在を。ーーエレオノラ王妃様」


 息をのんだ。前世の事を面と向かって言われたのは、クリストフォロス様以外いなかったから。


「イオアンナ……?貴女は……イオアンナなの?」

「ええ、そうです。そうですよエレオノラ様」


 そしてオリアーナ様はいつか見た、無邪気な笑みと共にお久しぶりですと言った。


 間違いなく前世とは変わってしまった国、変わってしまった家族、変わった容姿。
 それでも、記憶の残っている私達は前世を前世と割り切る事なんて出来ないまま、延長線上である今世を歩んでいる。


 そして、私とクリストフォロス様にフォティオスお兄様、3人共が過去に囚われたまま、この先の未来を作ろうとしている。


「イオアンナは……オリアーナ様は、ファウスト様の婚約者……なの……ですよね?」

「大丈夫ですよエレオノラ様。私に敬語なんて使わないで下さい。二人の時はイオアンナで大丈夫ですし、エレオノラ様に敬語使われるとちょっと変な感じです」