愛を捧ぐフール【完】

「失礼。娘は今、ファウスト殿下との結婚が迫ってきているので色々と戸惑っていてね。幼いうちに婚約したから、周りよりも早く結婚してしまう事に不安を感じているのだよ」

「はい……」


 昔とは違い、結婚適齢期はかなり上になっている。女の立場がまだ弱いといっても、昔程では無いし、私とオリアーナ様みたいに婚約者が早くに決まるのも珍しかった。


 実は私達の年齢では婚約者のいない方が多いのだ。現にフォティオスお兄様と第二王子様は婚約者はいない。


「君もセウェルス伯爵ともうすぐ結婚するのだろう?だから、きっと娘は君に親近感が湧いたんだ。よければ仲良くしてやってくれ」

「はい」


 友好的な言葉を私に向けながら、紅の瞳は敵を見るかのような険しさを孕んでいた。
 私がアウレリウス公爵に直接何かをした覚えはない。


 だとすれば、私とファウスト様の関係がこの人にバレて……?


 そう思いかけて、内心首を振った。そんな事がバレていたら間違いなく内密に誰かがファウスト様を止めるし、私は今のような穏やかな生活を送れていないだろう。


 王太子の醜聞などあってはならない。