3度目の夜会は、更に私は注目を浴びた。
 セウェルス伯爵はそれには頓着せず、私を引き連れて挨拶をして回る。その度に私は様々な人から、好奇心、嫌悪、色めいたものまで様々な視線を向けられた。


 グローリア王妃様が私に興味を示されているのは継続中なのか、更に周りに広まってしまっているだけなのか。


「クラリーチェ」


 隣のセウェルス伯爵が私の名前をそっと呼ぶ。何事かと顔を上げると、彼はいつもの穏やかな笑みを浮かべて視線だけで示した。


「ほら、あそこに君を気にかけている殿方がいるよ」


 つられてそちらの方を向くと、黒髪碧眼の少し神経質そうな青年ーーフォティオスお兄様が立っていた。


 フォティオスお兄様は私の事を頻繁に見ていたのか、思いっきり視線が交わる。けれど、私は即座に視線をフォティオスお兄様から外し、セウェルス伯爵に戻した。


「それでも私はエヴァンジェリスタ様の婚約者です。私は誰にも靡(なび)きません」


 そう、ファウスト様以外誰にも。