前世のフォティオスお兄様、現フィリウス侯爵家サヴェリオ様にどうにかして伝えたかった。私に関わらないように、って。


 けれど、フォティオスお兄様との繋がりはどこにもない。私にフォティオスお兄様に伝えることは不可能だった。


 手紙を出そうにも、お父様とセウェルス伯爵が何と言うか……。特に、セウェルス伯爵は私を使って何かしようと企てていた程だ。私がフォティオスお兄様に手紙を出しただけで、どうそれをセウェルス伯爵が利用するか分からなかった。


 この時代では特に私の力は弱かった。
 男爵の愛人の娘だ。元々の立場も弱かったけれど、私のせいでフォティオスお兄様が窮地に追いやられるのは本当に嫌だった。


 それは、ファウスト様の事も同じ。


 私の大事な人達が私のせいで傷付いてボロボロになっていくのは、もう嫌だった。


 セウェルス伯爵の事は元々狸だと警戒していたが、前回の夜会で更に警戒心が深まった。やはり、人当たりのいい穏やかな顔の下には野望が渦巻いているのだろう。