「シスト、ラウル。そろそろ隠れておいてね」

「はーい!オリアーナ様は僕達の事見分けてしまいそうだもんね」


 僕の言葉に大人しく従ったラウルは、執務室と繋がっている自室へと引っ込んでいった。勿論、ラウルもだ。


 今世で宛てがわれた婚約者は、オリアーナ・アウレリウス。王太子派中心であるアウレリウス公爵令嬢だ。


 彼女の父親であるアウレリウス公爵はかなり厳格で苛烈な性格だが、オリアーナ嬢は金髪に紅色の丸い瞳の温和な性格の美少女だ。


 外見ばかり美しいだけでなく、内面も幼い頃から王妃になる為に教育されてきただけあって、政治や外交の会話が出来るほど聡明である。昔も今も、女性に教育は必要ないと言われているだけに、周りにはいないような区分の女性だ。


 そして、彼女の一番の長所と言うべきは、その観察眼だろう。
 外見だけでなく、声も僕に似せているシストと僕を見抜きそうになったのだから。