エレオノラ1人に縛られず、皆を平等に愛せさえすれば、僕は国王として幸せになれたのにそうは出来なかったのだ。


「……馬鹿だなあ。僕も」


 前世も、今世も縛られている。彼女への愛に。
 でも、それが酷く心地いいのだ。


 それがどんなに茨の道でも、彼女と離れる方が辛かった。
 かつて彼女へ乞うた愛は、確かに今も僕の元にある。


「ファウスト様?」


 僕の呟きを拾ったらしいラウルが、不思議そうに僕に問いかける。


「何でもないよ。ちょっとした独り言。……なんだっけ、これからの予定は」

「ご婚約者のアウレリウス公爵令嬢オリアーナ様が来られるの予定ですよ」

「……ああ、そうだったね」


 窓の外をぼんやりと眺めていたが、ゆっくりと執務室内のラウルとシストへ視線を向ける。