何を考えているか分からない、無機質な栗色の瞳が私をじっと見つめる。まるでじわじわと私を責め立てるように。


「ええ……。お願いね」

「かしこまりました」


 ファウスト様との事がバレているかもしれない。そんな、底知れない恐怖と罪悪感に苛まれながら出した声はいつもより小さかった。




 ーー見られている。
 それも、前回とは比べられない程。


 そう気付いたのは、2度目の社交界で出席した公爵家の夜会での事だった。


 会場に入場し、早々に主催者に挨拶をしてからパートナーのセウェルス伯爵とダンスを終わらせる。前世とあまり変わらない流れを一通りこなして、他の招待客との挨拶回りに精を出すセウェルス伯爵の後ろについて回っていた。