「エレオノラ。こんな僕を愛してくれて、ずっと付いてきてくれて、……っ、ありがとう」


 クリストフォロス様の声が嗚咽混じりになったのを聞いたのは、はじめてだった。


 視界は覆われたままだったけど見当を付けて、クリストフォロス様の頬に手を伸ばす。彼は視界を覆っていた手で、伸ばした私の手を優しく握り込んだ。


 遮るものがなくなった視界に入ったクリストフォロス様の薄氷色の瞳から一筋、涙がこぼれ落ちる。彼に泣かないで欲しくて、微笑みを浮かべようとしたけれど、襲ってくる眠気にまぶたが段々と落ちる。


「エレオノラ……!起きて、お願いだから……、お願いだから、僕を……」


 今日は少しお話し過ぎた。フォティオスお兄様と久しぶりに会えたのが大きい。


 そういえば、最近とても色々な事があったからきっと疲れきってしまったのもあるだろう。


 最後に聞こえたクリストフォロス様の言葉に応えたかったけど、私は温かい微睡みの中に沈んでいった。