「エレオノラ」

「はい」

「エレオノラ」

「はい。……どうしたんですか?クリストフォロス様」


 迷子の子供のように私を呼ぶクリストフォロス様を見上げようとすると、私を支える腕とは別の方の手でクリストフォロス様は私の視界を覆った。


「エレオノラ……、最初に言っていたよね。僕と離縁してくれって」

「はい……」

「……僕を、恨んでいるかい?」


 クリストフォロス様は静かに問い掛けたけれど、実は彼はだいぶ気にしていたのかもしれない。


 あのまま離縁していたら、私は実家に帰って世間と隔絶された場所でゆっくりと過ごしていただろう。クリストフォロス様の新しい妻を見ることなく、その生涯を終えていたのだろうと思う。