いつか言われた。王妃である私が蔑ろにされているのではないか、という問いに関する答えだった。
 蔑ろになんかされていない。これ以上ない程に私は愛されていた。


「……フォティオス。そろそろ時間だよ」

「陛下……」

「これ以上はエレオノラに負担を掛けてしまうから」


 クリストフォロス様に促されて、フォティオスお兄様は渋々立ち上がる。去り際にお兄様は泣きそうな表情のまま、無理矢理口の端を歪めて笑った。


「陛下に愛想を尽かしてしまった時は、遠慮なく実家に帰っておいで。それでなくても、元気になったら一度実家に帰っておいで。みんないつでも歓迎してるから……」

「はい。そうさせてもらいますね」


 クリストフォロス様を前にしてこんな事を言えるのは、きっとフォティオスお兄様だけだろう。
 お兄様の誘いを私はきっと果たせない事を知っておきながら、頷いた。


「……エレオノラ」

「クリストフォロス様は大丈夫なのですか?移ってしまいますよ?」

「大丈夫だよ。……気にしなくていいよ。そんなの」