私の手を額に押し当て、涙をこぼしたフォティオスお兄様に静かに私は告げた。事実を。


「子供の産めない身体の私が、今までクリストフォロス様のお傍に居られた方がすごい事なのです」

「エレオノラ!」


 クリストフォロス様の制止を阻んでまで告げた言葉に、フォティオスお兄様の表情が何が起こったのか分からないような、愕然としたものに変わる。


「エレオノラ……、それは……どういう……?」

「そのままの意味です。私は子供が産めなくなったのです。流行病にかかって命が助かっただけでも、私は幸運だったのです」

「まさか……」


 血の気が引いていくフォティオスお兄様に、私は大丈夫という意味を込めて微笑みかけた。


「フォティオスお兄様。だから、クリストフォロス様は何も悪くないのですよ」