それからすぐの事だった。
 体調は回復することなく、高熱で魘(うな)された私の元にフォティオスお兄様が見舞いに来たのは。


「エレオノラ……!」

「フォティオスお兄様……」


 風邪が移る事なんてお構いなく、フォティオスお兄様は私の手を握り、目に沢山の涙を溜めた。


「……こんな、こんなことになるなら……、お前を王妃になどさせなかったのに……っ!」


 呻くように言ったフォティオスお兄様に、私は必死で首を振った。


「いいえ、いいえ……!そんな事ありません」

「今からでも遅くない。……私達の元に帰っておいで。ゆっくり身体を休めよう。ここは気が休まらないだろう?」

「フォティオス……!」


 フォティオスお兄様と一緒に、クリストフォロス様までも私の部屋にいた。
 いつもなら、移ってしまうから見舞いさえも止められるのに。


 ーー予感はしていた。