ニコニコと楽しそうに微笑むクリストフォロス様は私がいなくなったら、どうなるのだろうかとぼんやり思う。


 クリストフォロス様に私は必要とされている。子供が産めなくとも。
 子供の産めない女を、懐妊した隣国の元王女様を無視して王妃の座に居続けさせる事が大変な事くらい分かっている。


 彼は恐れているのかもしれない。
 王妃が私でない誰かになる事よりも、私が離婚出来ない王妃から降りて一側室になった時、彼から離れていくことをーー。


「エレオノラ」

「……あ、はい」


 心配そうに私の名を呼ぶクリストフォロス様に我に返る。


「エレオノラ、どこか具合でも悪いのかい?」

「いいえ、大丈夫です。ありがとうございます」


 にっこり微笑んでクリストフォロス様の首に腕を回して抱き着く。クリストフォロス様もやせ細った私を怖々とした手つきで抱き締め返してくれた。


 クリストフォロス様の腕の中はとても安心するのだ。


 慣れ親しんだ彼の匂いに埋もれた時、ここが自分の居場所という感じがして。