「寝たきりも退屈だろうから、本を持ってきたよ。少しは気も紛れるかなって思って」

「わざわざありがとうございます」


 侍女が何巻かの巻子本(かんすぼん)を抱えて持ってきて、退出する。いつの間にか室内に侍女はいなくなっていた。


「あまり君が好きそうなものがなくてね。とりあえずおとぎ話が纏められたものをいくつか」

「おとぎ話は好きです。みんな幸せになるから」

「エレオノラが喜んでくれるなら選んだ甲斐があったよ」


 上流の生まれなので、読み書きだけは習っていた。だからちょうど良い時間潰しになるだろう。
 巻子本(かんすぼん)を手に取り、これはどんなのだとか中身について、クリストフォロス様は寝台に腰を掛けて、寄り添うように私の側で説明してくれた。


 権力と財の象徴とも言えるような、王様らしい金銀宝石で出来た腕輪や指輪をはじめとした装飾品をいつも身に付けているクリストフォロス様が、それを全部外して肩の力を抜いている姿は、どこにでもいるような普通の青年みたいだった。