クリストフォロス様の手がゆっくりと私の頭を撫でる。国王の顔なんてどこにもない、ただ1人の男の人がそこにはいた。


 王妃である私と側室であるテレンティア様がそこまで顔合わせをしないのは、きっとクリストフォロス様が配慮して下さっているのだろう。そうでなければ、テレンティア様は私の元になんだかんだ理由を付けて押し掛けて来ていたかもしれない。


 今回のように、見舞いだなんて理由を付けてわざわざあの様な事を言いに来る位だから。


 テレンティア様はクリストフォロス様の事を好きなのだろうか?よく分からないけれど、それを抜いても、彼女は母国を背負うという複雑な事情を抱えている。私のことがきっと邪魔なのだろう。


 クリストフォロス様は私を離しはしないだろう。私もクリストフォロス様の元を離れるつもりは無い。けれど、離れなければいけない時は一刻一刻と、死の気配は一刻一刻と近付いてきている。


 きっと、この恋は誰も幸せにはしない。