Bon anniversaire

「ええ！？ハンカチって贈ったらダメなんだ…」

本を読みながら、麗愛は驚いたりそんな意味があるのかと考えたりした。

しばらく本を読んでいて、伯がよくコーヒーを飲むことを思い出した。砂糖もミルクもないブラックコーヒー。麗愛には飲めない大人な味。

「麗愛にはまだ早いみたいだな」

初めて飲んだ時、麗愛は予想以上の苦味に吐き出してしまった。むせる麗愛に笑いながら伯が言ったのだ。

コーヒー豆を買ってあげるのはどうだろうか。麗愛の中にそんな考えが浮かぶ。

一つの種類だけでなく、いろんな味を楽しめるようなセットを買ったら……。

麗愛はそうしようと決め、本棚に本を戻して図書室を出た。

夕暮れの廊下を歩く。今日は伯は用事があると言っていたので、珍しく麗愛は一人で帰らなくてはならない。

廊下を歩いていたその時、「ど、どうしてよ！？」とヒステリックな女子の声が麗愛の耳に届いた。何事かとその声のした方を見ると、中庭で女子生徒が男子生徒に詰め寄っている。