Bon anniversaire

「えっと…たしか、ビーフシチューをするって言ってました」

ポトフはフランスの料理、ビーフシチューはイギリスの料理だ。

「世界史の後半になってくると、イギリスとフランスは対立してばっかりだよ」

今日世界史があったんだ、と伯は笑う。

「そうなんですか?知らなかったです…」

世界史はまだ麗愛は習っていないので、どんなことを学ぶのかはわからない。しかし、歴史の授業は苦手なので覚えられそうにない。

「さて、お喋りはここまでにした方がよさそうだな…」

伯は、麗愛の耳元に口を寄せる。耳元で何度ささやかれたか麗愛はわからない。

「Bonne nuit(おやすみ)A' demain(また明日)」

伯がそう言った後、麗愛もドキドキしながら舌ったらずなフランス語で返す。

家に入る直前、伯が振り向いて言った。

「麗愛からのプレゼント、楽しみにしてる」



七月十日は、伯の誕生日だ。毎年麗愛はおしゃれな伯に合うプレゼントを選ぶのに苦労している。

伯が麗愛にくれるプレゼントは、どれもかわいくて麗愛のお気に入りだ。