天が一面の星空になるとクリフ様は私の額にキスをする。
さあ帰ろうの合図だ。

いつものようにキスを受けて立ち上がる私とは反対にクリフ様は動かない。

いつもと違うことに気が付いた私はどうしたの?と首をかしげて彼の返事を待っていると、クリフ様はいきなり跪いて私の左手を取った。

「楓、この世でただ1人の愛しいわが番。
私はどうしてもこの手を離すことができない。
このままこの竜王の王妃としていつまでも私の隣に立ってもらえないだろうか」

私を見つめるクリフ様の瞳は赤々と燃えているような真紅に輝いている。
これはプロポーズなんだろうか。

竜王の瞳。この薄暗い中庭にあってもお顔がはっきりと見えるほどだ。

でも、私は知っている。
いつでも自信満々で人々から圧倒的な支持をされているこの人が私に関わることだけは時に瞳の中の紅い光をゆらゆらと自信なさげに揺らしてしまうことがあることを。

「私とあなたではずいぶんと寿命が違いますよ?私が死んだ後も寿命の長いクリフ様はどうなさるの?」

それは私の中の素直な疑問だった。

私は後70年生きられるかどうか。対してクリフ様はあと200年以上の寿命があるはずだ。