クリフ様は紫外線に弱い私のためにあちこちに日差し避けのツタのような雲の這うパーゴラ風の屋根のある歩道や東屋を作ってくれていた。

高度が高いここは紫外線量が多くて、日を浴びると私の肌に負担になるのではと心配だったけど、意外にも大丈夫だったのは実はクリフ様の鱗のおかげだったと先日知った。

「竜王の鱗の効果はすごいものだ」
魔法省長官のチャールズ様に教えていただいた。

「番の身体の免疫力を上げ皮膚のバリア効果もある。普通の竜ではここまでの効果はないのだ。楓はここへ来てから体調がいいのではないか?」

言われてみれば普段から度々胃腸の調子が悪くなるのにここに来てから全くない。風邪もひかず、肌の調子もいい。
髪にも栄養が行き届いていて艶々のさらさらだし。

日焼け止めは塗っているけれど、普段ならすぐに日焼けをしてしまうのに太陽の下にいても赤くなったりしないことに疑問は感じていた。

なるほど、これらは全てクリフ様の鱗のおかげだったのかと知ったのである。



中庭の東屋から暮れていく太陽を眺める。
西の空の雲は茜色に染まり日没が近く、東の空は濃いブルーが深くなっていく。徐々に星が瞬きはじめもうすぐブルーアワーがやってくる。

私はこの時間がとても好きだ。
日没直後に紫に近い青から群青色のグラデーションがとても綺麗で空と自身が一体化したような幻想的で不思議な気持ちになる。

こんな時、クリフ様は黙って隣で肩を抱いていてくれる。

例えば、あなたが生まれてきたのは彼に会うためだったのだよと誰かに言われたとしたら、今ならそうですねと頷くだろう。

幸せとはこういうことをいうのかもしれない。