「クリフ様、私がお仕事の話に口を出しちゃいけないのはわかっているけど・・・もう少しペースを落とすことはできない?」

「ラウルや執務室の連中に泣きつかれたって聞いたよ。楓を巻き込んでごめんね」

「違うの。私も心配だったし忙しすぎておかしいなって思ってました。忙しい原因の半分以上が私のせいって本当ですか?」

「誰だ、そんなことを楓に吹き込んだのは」
クリフ様の顔が厳しくなる。

「そんなことよりさっきも言いましたけど、本島に行くより一緒に毎日のご飯が食べたい。--ダメですか?」

「ああ、可愛い。私の番が可愛い。」
私の頬にクリフ様の手が触れる。

「私にクリフ様を癒す効果があるって本当?」

「そうだ。だから私は毎日深夜まで働けるんだ。ここに戻ってきて寝ている楓の顔を見ながら頭を撫でる。それだけでも少し魔力が戻り、生気が戻るような感覚がする」

私のくちびるを人差し指でつつーっとさするように触れると
「さっきは唇を合わせたからかなり疲れが取れたよ」
甘く囁いた。

恥ずかしさと嬉しさで身体が痺れてしまう。
彼の隣にいるのはどうしてこんなに心地がいいんだろう。

クリフ様の優しい微笑みに私も笑みを返すと、ぐいっと彼の胸に引き寄せられた。
温かいぬくもりに次第に私の身体の力が抜けていく。
彼の背中に腕を回し手のひらでそっと撫でてみると彼の力も抜けていき、お互いの体温を感じながらただ黙って抱き合った。