鼻の奥から喉に、肺に、お腹に、脳に、手先にから足先に身体の中を温かい何かが回り始める。

そしてじわじわと胸が苦しくなってきた。

「楓」

もう一度名を呼ばれて確信した。

私、恋をしたのだわ。


気がついてしまうとより照れくさい。
顔を隠すようにして抱きついていると、両頬に手を当てられて上を向かされる。

「楓、私の番」

そのままゆっくりとくちびるが落ちてきた。
温かく、甘酸っぱい味がした。


「こんなに身体を冷やして」
裸足で飛び出してきた私の膝の裏に手が回されて抱えあげられる。

クリフ様は私を軽々と持ち上げてお姫様抱っこをしてソファーに運ぶと、冷えてしまった足をゆっくりとさすりはじめた。
触れられているところからじわじわと血液が回ってきたみたいに血色がよくなり温かくなってくる。

「魔法なの?」
「どちらかと言うと番の力かな」

「ヘストンさんから番のことも習ったわ。番には特別の力があるって」

「番は生涯でただ一人。だから私も楓と出会うまでは知識があるだけでこんな力があると思わなかったよ。だからラウルがビエラにべったりするのを半ばあきれるように見ていた。マルドネスのこともそうだ。だが、それが番の楓に出会ったことで考え方が変わったよ」

愛おしいと目を細め、私の足をさする手が一層温かくなったように感じる。