結局、その日もクリフ様は夕食に間に合わず、私はまた先に一人で食事をとり寝室に入ることになった。

こんなに帰りが遅いなんて。
こんな生活絶対にダメだわ。
それに、私はどうにも落ち着かず不安な気持ちに襲われていた。

「お願い、クリフ様がお戻りになった時にもし私が眠っていたら教えてちょうだい」
侍女とメイド、入口を守ってくれている護衛にも声をかけておいた。

絶対に待つと決めたのに、深夜を過ぎて眠気が襲ってくる。

うとうとと微睡みそうになったところで、隣の部屋から物音が聞こえてハッとする。

クリフ様が戻られたらしく、恐らく今夜私の部屋の前を守って下さっている護衛の方と話をしている。

もたれかかっていたソファーから身体を起こし裸足のまま寝室のドアを開けると、クリフ様が護衛の方に「楓は起こさなくていいんだ」と言っているところだった。

二日ぶりに見たクリフ様はやはり疲れているようで顔色が良くない。
私は思わず何かに惹かれるように駆け出した。

「クリフ様!」
「楓?!」

驚いて目を丸くしながらも飛び付いた私をしっかりとキャッチしてくれる。

「どうした、こんな夜中に」

見上げるとすぐそこにクリフ様の顔があって、私を抱きとめてくれたクリフ様がここにいる。

「だって、会いたかったんです」

ここ数日感じていた私の素直な気持ち。

「それに、寂しかった」

ここの人たちは皆さん私に優しい。
でも、クリフ様に会えない日は心に穴が空いたように物足りない気持ちが大きかった。

「クリフ様。この国のためだというのなら我慢します。でも、私のために無理するのはやめてください。
本島なんて行かなくてもいいの。でも、1日1回でもいいから一緒に食事をするかお顔を見られる時間が欲しいんです」

「楓」

クリフ様の胸にすりっと顔を寄せるとあのいい香りがする。