翌日、クリフォード様ご一行がお見えになると私はすぐにシェリルさんに内線で呼ばれ、アレを持って応接室に向かった。

シェリルさんから「あなたから直接受け取りたいと仰ってるの」と中に入るように言われたのだ。

部屋の外にいたわが社の警備員に声をかけると話は通っていたらしくすぐに扉を開けてもらえ中に入るように促される。

部屋の中には二人の護衛に囲まれた漆黒の髪のクリフォード様がいて、クリフォード様はシェリルさんから今から体験するミスト付きバスルームの説明を受けているところでこちらには気が付かない様子だった。

うわぁ、数メートル先に超美形のクリフォード様。
こんなイケメン、今まで見たことがない。

「失礼します」
私はドキドキする胸を抑えつつクリフォード様たちが座るソファーに向かって一歩踏み出した。

「あなたが秋月さんですか。拾っていただいてありがとうございます」
手前に立っていたクリフォード様の金髪の壮年の秘書さんが私に微笑みかけてくる。

クリフォード様はこちらに顔を向けることなくシェリルさんの話を聞いていた。
そうか、”直接”とは言われたけれど、クリフォード様に直接渡すとは言われていない。秘書さんに直接っていう事か。

クリフォード様に渡すのだと勘違いしてしまった私はバツが悪くて顔が熱くなる。
クリフォード様に近付くことも叶わず秘書さんに向かってハンカチを広げた。

「こちらで間違いありませんか」

ハンカチの中には昨日見つけた鱗のようなものがキラキラと瞬いている。

あ、あれ?これ昨日より色が濃くなって香りも強くなっているみたい。

その途端、秘書さんが息をのむ気配がした。
そしてがたんと音がしてソファーから立ち上がり大きく目を見開いてこちらを見つめるクリフォード様の姿が目に入った。