食後はクリフ様手ずからお茶を淹れてくれた。

「美味しいです。ダージリンですね」

「そうだよ。食材は毎日地上からここに運んでいるんだ。楓が言っていたように魔法でね」

ふうんと頷くと、クリフ様の話が始まった。

「楓たち地上の人々が天上界と呼ぶこの竜の国は雲のような大きな島といくつかの小型の島のようなものでできている。
この宮殿があるのは小型の島だ。竜の国というのは竜が統治しているからその名がついているが暮らしているのは竜族だけではない。
竜の国の民が多く暮らす大きな島、本島と言うがそこには狼やユニコーン、巨人アトラスやフェアリーなどの幻獣がいる。
ただ、人間はいない。過去にはいたのだが最近はいない。それには寿命が関係していると言われている」

「竜の寿命は300年以上だと言われている。
50年で成人してそこから250年以上生きる。私は生まれて115年になるんだ。楓は24才だったか。私とは100年とは違わないな」

115才。
クリフ様は若々しくてどう見ても20代後半に見えるけど。115才なんだ。

「115年かけて番が見つかったんだ。嬉しくないはずはないだろう?」

そう、それだ。
嬉しそうなクリフ様の態度を見る限り、”番”とは特別な何かなのだ。

「昨日聞けなかったんですが、番と言うのは竜族の方にとってどのような存在なのかが今一つわからないのです」

「”番”は竜族にとって唯一で最愛の存在だ。身も心も魅かれるんだ。どうしてなのかわからない。だからこそ運命の相手と伝わっている。私も今までは半信半疑だったが楓と出会って確信した。”番”は特別なのだ」

クリフ様が席を立ち私の隣に歩み寄ると、私の左手を取りひざまずいた。
「竜は一度、番の存在を知ってしまったらもうどうしようもない。姿に声に香りに惹かれてもう手放せないと思ってしまうのだ」

そうしてそっと手の甲にくちづけをした。

「く、クリフ様。気を送るのは反則です。やめてください・・・」
私の声が震える。クリフ様の気が流れ込んできたらしく甘酸っぱいもので心がキュンとして落ち着かなくなる。

「気は送っていない。嘘じゃないよ」

手をぎゅっと握られるとまたキュンキュンしはじめる。

「これでは心臓が持ちません。ちょっと離れて下さい。お願いします」
涙目になりながら訴えると、
「私の番は本当に可愛い。でも、心臓が止まると困るから少し我慢するね」
と元の席に戻ってくれた。

秋月楓、ピンチです。