「それに、昨日の晩餐でいろいろ知ったこともあるんです。昨日、わざと私に言わなかったことがありますよねっ?!」

私はベッドのマットレスをタンタンっと叩いた。

「わかってる、わかってるからそう怒らないで。とにかく朝食をとってから話さないか?いや、取りながらでもいいよ。ここに運ばせるから」

クリフ様がどなたかを呼ぶ鈴を手に取ろうとしたので慌てて止めた。

「待ってください。私が着替えてからにして下さい」

「着替えを手伝うのはメイドの仕事だよ?」

「自分でできることは自分でしたいんです。でなければ自分を見失ってしまいそうで怖いです」

この人は竜王かもしれないけど、私はただの人間で普通の会社員なのだから。一般人はよほどの高給取りでない限りメイドなんて使わない。それに高給取りの会社員は一般人とは言わないかもしれない。

「でも、今日着るものは準備してもらわないといけないから、楓のメイドは呼ぶからね」

そう言えばどこに着替えが置いてあるのかもわからない。
結局、鈴が鳴らされてオリエッタとエメが部屋に入ってきたのだった。

「おはようございます。クリフォード様。楓さま」

オリエッタさんの綺麗なお顔とエメの可愛らしい笑顔に朝から癒される。

そうだエメったらこの子、フェアリーなんだったわ。
今度、妖精の姿を見せてもらう約束もしたし、いまから非常に楽しみ。

「楓の着替えと朝食をここに運んでくれ。それと、ダニングに今日の昼食後まで私の時間を空けるように言って欲しい」

「畏まりました」とオリエッタとエメは足早に出て行った。