ううむ…と悩んでいると
「楓さま、地上でのお仕事はバスルームの関係だとうかがっておりますが、あの…岩盤浴と言うのはお湯を浴びないというのは本当ですか?」

メイドのエメとネリーがキラキラした瞳を向けてきた。

「私たち人型でいるときも長い時間身体をお湯に浸けるのは得意ではなくて。でも、デトックスには興味があるのです。
ダニング様が地上には岩盤浴と言う浴槽に浸からないものがあったとおっしゃって」

いきなり岩盤浴の話にちょっと驚くけれど、仕事がらみの話なら私もスムーズに話に入ることができる。
とりあえず、一連の疑問は棚上げして可愛らしいエメとネリーの疑問に答えよう。

「ええ、確かにあるわ。岩盤浴は浴槽に浸かるものじゃない。でも、それ大量の汗をかくから岩盤浴の後にシャワーを浴びてすっきりしたくなるはずだけど、それは大丈夫なの?」

「はい、それは問題ありません。人型でシャワーを浴びることもありますから。羽を畳んでいればいいのです」

羽、羽?
私の可愛いメイドさんたちにはどうやら羽があるらしい。

「あの、失礼だったら本当にごめんなさい。実は私、この国について何も知らないの。クリフ様が竜王だということは聞いたわ。他の方々もみんな竜族だと思っていたのだけれど、もしかしたら違うの?」

隣に座る侍女と騎士様のお顔を見比べた。

「この国は竜族の他にも幻獣族が多く暮らしているのです。例えば、ここにいるエメとネリーはフェアリーです。私は幻獣族ではありませんし、竜族でもありません。狼族なのです」

フェアリー!狼?
まさか、そんな。女性騎士の口から語られる言葉に驚いて目をしばたたかせる。
それこそおとぎ話のようだわ。

「他にも幻獣族がいますよ。例えばユニコーンやケルベロスとか」
まああ。
お会いしたい、是非とも。