わたし竜王の番(つがい)です ～気が付けば竜の国～

「おやおや、まだいろいろ説明するには時間が足りなかったようですね、クリフォード様」

「そうなんだ。だが、仕方ないだろう。楓は竜族の存在すら知らなかったのだから」

二人が会話する横で私はこれ以上思考を読まれないように表情を固めて平常心、平常心と心の中で唱えていたのだった。

「私の番は何と可愛いことだろう」
クリフ様に頭を撫でられ、その姿を秘書さんに微笑ましく見守られ何だかとてもむずむずとする。

でも、ここで口を開くとまたからかわれそうなので、黙っていることにした。

黙っていても笑われているようでむずむずするのだけれど。

「申し訳ありません、楓さま。
本来なら今夜はクリフォード様とごゆっくり食事をしていただきたかったのですが、城の者たちが楓さまとお話をしたいと騒いでおりまして…よろしければその者たちの同席を許可していただけないでしょうか」

「くっ、あいつらか」
クリフ様が片手を額に当てて頭を抱え面倒くさいと言わんばかりに眉をしかめる。

「はい、貴族たちとの正式な晩餐ではございませんので、楓さまもいくぶんか気楽にすごしていただけるのではないかと。それにその方がこちらの事情もわかりやすいのではないかと」

クリフ様は少し考える仕草をして私に振り向いた。
「いいか？楓」
「私はクリフ様の判断にお任せいたします」

どのみち私に判断できないし今はより多くの情報が必要だ。