わたし竜王の番(つがい)です  ~気が付けば竜の国~

「クリフ様、なるべく手早くお願いいたします」

「わかっているよ」

「このあたりでいい?」

クリフ様の指が左の肩甲骨あたりに触れる。
またびくりと身体が動いてしまう。

くすりと笑う気配がして「クリフ様」とたしなめるように声を出すと
「だから、このあたりでいいかい?」
と今度はするりと撫でられる。

「ひゃっ」
ぞくぞくっとした感覚にじわりと涙が浮かんでくる。

本当に勘弁してください。
胸に貼るのをいやがった腹いせか彼は触れるときに気を送っているのだ。

「そのあたりで結構です。お願いですからからかうのはやめてください」

身体をよじって訴えると彼はやっぱり笑っていて「ごめん、ごめん」と鱗を手にした。

「今度は本当に貼るから」

クリフ様の指とは違う感触がして、これが鱗かと思った。
絆創膏を貼ったような突っ張った感じは一瞬ですぐに無くなり、後は温かさだけが僅かに残る。

「はい、終了」
背中のファスナーが閉められて私はホッと息をついた。

「ありがとうございました」

クリフ様に向き直ると彼はいたずらが成功したかのような笑顔だった。

何だか悔しい。
私ばかりが振り回されている。

目が合うとまたニヤリとされてまた悔しくなる。
済ました印象のクリフ様だけど案外子どもっぽい所もあるのかもしれないと思うと少しだけ親近感がわく。