わたし竜王の番(つがい)です  ~気が付けば竜の国~

「どこに行くんだ」

「鱗を貼るために侍女さんと着替えをしたお部屋に一度戻ろうかと思います」

「貼り付けるだけなら隣の部屋を使うといい。ああ、でも鱗は持ち主の私でないと貼りつかないんだ。ごめんね」

何ですと?持ち主でないと?
クリフ様の悪びれぬ笑顔に本当かと疑ってしまう。
でも脱がずに貼ることができる場所は首と今見えている胸元しかない。

いやいや、胸元も首もナシでしょう。
「・・・クリフ様、お願いいたします」
私はその場でクルっとクリフ様に背を向けた。

「ん?何だい、楓」

「ですから私のドレスの背中のファスナーを少し下ろして背中に貼っていただけますか。コルセットは背中が大きく開いておりますので、ドレスのファスナーを少し下ろすだけで貼ることができます」

「---ああ、そうか」
背後でクリフ様の残念そうな声がしたけれど、やはり気がつかなかったことにする。

背中のファスナーを下げてもらうなんて恥ずかしいけれど、コルセットを外したお腹に貼ってもらうよりましというもの。
そもそもがこの方の色気はハンパない。
素肌のお腹をこの方に触られるだなんて恐ろしい。私の理性が崩壊したら困るのだ。

はい、と鱗を渡してうふっとわざとらしい笑顔を見せると、
「敵わないな、私の番には」
と右の口角がきゅっと上がった苦笑が戻ってきた。

「では、楓の言う通りの場所に貼り付けるとしよう」

私は背中にかかる髪の毛を邪魔にならないよう除けるために両手でまとめて持ち上げるようにしてから改めてクリフ様に背中を向けた。

私の背中にクリフ様の手がかかり、ジジっと音がしてファスナーが下ろされる。
そうしてドレスが開かれて背中に空気が触れるのとクリフ様の手のぬくもりを感じるのが同時にやってきて思わずびくんとしてしまう。

「そんなに緊張しないで」
くすくすと笑われてしまうけれど、こんな状況で緊張しないわけがない。