わたし竜王の番(つがい)です ～気が付けば竜の国～

隣に座るクリフ様をついじっと眺めてしまった。

この美しい方はーー竜なんだ。

「気味が悪いか？人間ではないと受け入れられないか？」

黙ってしまった私にクリフ様が探るような少し影が差した瞳を向けてくる。
気味が悪い？ーーーいいえ、とゆっくり首を振った。

「そうではありません。そんなことを考えていたわけではないのです」

クリフ様の不安に思う気持ちが手のひらの鱗から私に流れ込んでくるような気がするのは気のせいではないだろう。

「動揺してます。私にとって竜族や天上界はおとぎ話の世界の存在でしたし、しかもクリフ様は竜王様ですよ。そんな方からいきなり特別だと言われても」

「なぜそんなに沈んだ顔をする」

「申し訳ありません。予想外のことで理解が追いついていかないんです。ここが天上界だということもあなたが竜王様だということも。その上、番だと言われても。私はそんな意味のある人間ではないと思うのです」

ふう
クリフ様が息を吐いた。

「楓、私は少し喜びすぎて焦っていたらしい。楓に対して気が急いてしまった。
聞いているだろうが、キミはしばらく地上に帰ることができない。社長と政府に手を回させてもらった。この先はゆっくりでいい、少しづつ話をしながらまず距離を縮めていきたいと思うんだがどうだろうか」

会社だけでなく国からも背中を押されるようにして連れてこられたのだからどちらにしても拒否はできないし私は頷くしかないのだ。

それに私には情報とそれを頭の中を整理する時間が必要だ。